BLOG保育園日記

子どもにとって本当に大切なこと ーレジリエンス(復元力・回復力・折れない心)を育みたいー

2024.11.01

以下は、『真宗保育』第505号に掲載されていた、橋本真理子先生(九州大谷短期大学客員教授・九州大谷幼稚園園長)のお話です。とても大切なことと思います。皆さんと共有いたしたく、こちらにも上げさせていただきます。

人は、どのようにしてできないことができるようになっていくのでしょうか。保育、教育に関わる私たちは、このことを永遠の課題のように思い悩んでいます。お腹が空いた時に一人でご飯が食べれるようになるといった本能的なことから、大勢の人前で自分の考えをプレゼンするといった少々難度が高いものまで、様々な内容や段階があるからです。しかも、文字が書けるようになる、鉄棒や跳び箱ができるといった知識や技術を伴うものや、「思い切り」や「恥ずかしさ」のような心理的要素を伴うもの、また、一人ひとりの発達状態や性格などの個人差とも相まって、一斉にすべての子どもが同じようにできるとは限らないし、できないこともあるからです。




私は、長年高校の教育現場で生徒たちと関わる中、自分ができなかったり失敗したりすることで諦めて前に進めない、進まない子どもたちを大勢観てきました。失敗したくない、失敗するのが怖い、恥ずかしい、自信がない、だから挑戦しない子どもたち…本当は誰だってできるようになりたいし、失敗はしたくないはずです。「失敗は成功のもと!」と思える心が欲しいですね。
そのように思えるにはどうしたらよいでしょう。特に幼少期に、「たくさん失敗すること」だと思います。例えば、小さな怪我(擦り傷や切り傷)は大きな怪我をしないための予防だとも言われています。子どもが転んで怪我をしないためには、家の中でばかり遊ばせる、柔らかいマットを敷き詰める、転ぶ前に助けるなどでしょうが、それでは健全な成長や自立とはならないでしょう。
ここ数年、「レジリエンス」(復元力・回復力・折れない心)を育むことの重要性が教育界でも注目されています。AIの導入等で二十年後には、現在ある職業の半分が消失すると言われるような予測困難な時代を、子どもたちは確実に大人になっていくのです。だからこそ子どもたちにとって大切なのは、人から言われて動くのではなく自分で考え行動できること、失敗してもケロッと笑って進もうとすること、それができない人がいたら助けて一緒に歩もうとすることなどではないでしょうか。私たち大人は、出来栄えを求めてつい子どもに先回りして教えてしまい、子どもが自分で考える機会を潰してしまいがちです。何かに熱中している子どもがいたら、大人はそっと見守り、求められた時だけ手を貸すことが大切なのではないかと思います。「失敗しても大丈夫」「失敗は成功のもと」です。どんなに失敗しても、修正する、やり直す、うまくいかなくても何とかなるさと思える、その時立ち直らなくても少々放っておく余裕が持てる、そんな「レジリエンス」を育めたらいいですね。



最後に、この「レジリエンス」は私たち大人にもまったく同様に必要なことだと思います。保育に関わる大人こそが、子どもたちと共に明るくたくましく生き抜いていきたいものです。

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